墓じまいと散骨は一緒に進めるのがおすすめ!手続きの流れや費用について徹底解説

従来は先祖代々のお墓を守っていくのが当たり前でしたが、少子化や核家族化によって供養の形が大きく変わりつつあります。
「お墓の管理が難しい」「子どもに負担をかけたくない」といった悩みを抱えている方にとって、「墓じまいと散骨」の組み合わせは、自然に還るシンプルな供養方法と言えるでしょう。
この記事では、これらの背景や具体的な手続き、メリットとデメリット、費用相場などについて詳しく解説します。
墓じまいをしてから散骨はそもそも可能?
結論から言うと、「改葬許可証を取得して遺骨をお墓から取り出し、粉骨したうえで節度を持って散骨を行う」という条件を満たせば、墓じまいのあとに散骨を行うことは可能です。
墓じまいでお墓から遺骨を取り出す際には「改葬許可証」を取得する必要がありますが、取り出した遺骨を散骨する場合には、法的に特別な許可や届け出は不要です。
改葬と散骨では、手続き上の要件が異なる点に注意しましょう。
法律では散骨そのものを禁止しておらず、法務省も1991年に「葬送のための祭祀として節度をもって行われる限り刑法190条(遺骨遺棄罪)には当たらない」との見解を示しています。
また、厚生労働省も「墓地埋葬法は、もともと土葬を対象としていて、散骨のような葬法は想定しておらず法律の対象外である」と表明しているのです。
2021年には厚生労働省により「散骨事業者向けガイドライン」が公開され、粉骨義務や衛生・環境面の配慮が整理されたことからも、墓じまいをしてから散骨は法的にも問題なく可能です。
なぜ「墓じまいと散骨」が注目されているのか?
「墓じまいと散骨」が注目されている理由として、次の3つを挙げることができます。
- 少子化・核家族化によって供養の形が変化しているため
- 現代社会では、お墓の管理が難しくなっているため
- 自然に還る新しい供養として海洋散骨が適しているため
以下で、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
少子化・核家族化によって供養の形が変化しているため
日本では少子高齢化が進んでいるため、子どもがいない家庭や兄弟姉妹が少ない家庭も多く、「お墓を継ぐ人がいない」という人が増えています。
また、核家族化によって親世代と子世代が離れて暮らすケースが多く、実家のある地域まで足を運んで墓参りをしたり、お墓の管理をしたりすることが難しくなっています。
その結果、承継者が不要で子どもに迷惑をかけない「墓じまいと散骨」という供養方法が注目されるようになったのです。
現代社会では、お墓の管理が難しくなっているため
お墓を維持していくためには、管理のための費用や時間が必要となります。
たとえば、年間管理費や清掃費用、法要のたびの交通費などは意外と大きな負担となります。
また、近年ではお墓の管理責任が曖昧になった結果、放置されて無縁墓になるケースも増えています。
このような現実的な問題を解決する方法として、墓じまいをして遺骨を取り出し、その後の供養として散骨を選ぶ方が増加しているのです。
自然に還る新しい供養として散骨が適しているため
散骨とは、遺骨を粉骨して海や山林などに撒く供養方法です。
この「自然に還る」という供養方法が多くの人の心に響いています。
また、宗教や宗派にとらわれず自分らしい終末を望む人からも選ばれることが多く、遺族にとっても、故人が望んだ形で送り出せたという満足感を得やすい供養方法ということができます。
「墓じまいと散骨」の具体的な手続きの手順
「墓じまいと散骨」は、一般的に次の手順で行います。
手順 |
具体的な手続き |
---|---|
①親族・墓地管理者への説明 | ・親族への散骨の意思確認を行う ・寺院・霊園管理者へ墓じまいの意向を伝える ・離檀料など費用目安を共有する ※トラブル防止の最重要工程。合意が難しい場合は行政書士や弁護士へ相談しましょう。 |
②改葬許可証の取得 | ・自治体に「改葬許可申請書」と寺院発行の「埋葬証明書」を提出する ・改葬許可証を受けとる ※発行まで1 日〜数週間が一般的です。 |
③遺骨の取り出し・閉眼供養 | ・石材店または墓じまい業者が墓石を開け、遺骨を取り出す ・僧侶による閉眼供養を行う ※取り出した遺骨は自宅または一時保管施設へ安置する。 |
④粉骨処理 | ・遺骨を1〜2 mmのパウダー状に粉砕(人骨と判別できない粒度) ※散骨ガイドラインで推奨される必須作業。湿気がある場合は乾燥処理を行う。 |
⑤散骨業者の選定と手続き | ・海洋散骨か、山林散骨など散骨方法を選ぶ ・業者が異なるため、散骨業者を選定し契約手続きを行う |
⑥散骨の実施 | ・海洋の場合:陸地から1 海里(約 1.8 km)以上沖合で散骨 ・山林の場合:私有地の許可取得、条例確認を行い問題ないことを確認してから散骨 ※航路・漁場・レジャー海域を避け、環境と周囲への配慮を徹底することが重要。 |
⑦手元供養 | ・粉骨業者に希望量を伝え、密封されたパウチや専用カプセルに分骨してもらう ・遺骨を納める容器やアクセサリーを選んで家の仏壇などに供える |
それぞれの手順について具体的に見ていきましょう。
①親族・墓地管理者への説明
まず最初に、家族や親族などへ墓じまいを検討していることを伝えて同意を得る必要があります。
後々のトラブルを避けるためにも、丁寧な説明と合意形成が欠かせません。
特に年長の親族ほど「お墓は代々守るもの」という価値観が強い傾向があります。
維持費の負担が大きいことや、お墓が遠くにあり親族がなかなかお墓参りにいけないこと、など「なぜ散骨を選ぶのか?」を丁寧に説明しましょう。
もし、親族との話し合いがスムーズに進まないような場合は、強引に進めるのではなく行政書士や弁護士などの専門家を交えた話し合いに切り替えると、感情的にならず冷静に相談することができます。
親族の同意が得られたら、次はお墓を管理するお寺や霊園に墓じまいの意思を伝えましょう。
②改葬許可証の取得
遺骨を別のお墓に移す場合は、墓地の所在地を管轄する自治体から「改葬許可証」を取得する必要があります。
ただし、散骨を目的とする場合には、新たな納骨先を記入できないため、自治体によっては申請自体を受理していないことがあります。
まずは、お住まいの役所に事前確認しておくと安心です。
勝手に遺骨を持ち出すと違法になるので注意しましょう。
改葬許可証の取得手順は次の通りです。
- 寺院や霊園に埋葬許可書を発行してもらう
- 役所窓口に埋葬許可書と改葬許可申請書を提出する
まずは、お墓を管理している寺院や霊園に墓じまいの意思を伝えて、「埋葬証明書」を発行してもらいましょう。
お墓が寺院にある場合は、檀家を離れることになるので「離檀料(りだんりょう)」が必要となる場合があります。
離檀料とは、檀家を離れる際に納めるお布施のことです。
相場は数万円〜数十万円程度。
埋葬許可書を発行してもらったら、墓地の所在地を管轄する地方自治体の窓口で「改葬許可申請書」と「埋葬許可書」を提出しましょう。
手数料は数百円〜数千円程度で、改葬許可証が交付されるまでの期間は、即日発行の自治体もあれば、2週間ほど時間がかかる自治体もあります。
GWやお盆などの前後は混み合うので、散骨の1ヶ月〜2ヶ月前には改葬許可証の申請を行っておくことが理想です。
※多くの場合、遺骨をお墓から取り出す際に改葬許可証の提示を求められます。したがって、原本を失くさないように注意しましょう。なお、管理者によっては不要とされる場合もあるため、事前の確認が大切です。
③遺骨の取り出し・閉眼供養
改葬許可証が発行されたら、墓石を開けて遺骨を取り出す作業になります。
この作業では、石材店や墓じまいの専門業者が立ち合い、僧侶が読経して墓石から仏さまの魂を抜く「閉眼供養(へいがんくよう)」が執り行われるのが一般的です。
閉眼供養の読経料は3万円〜5万円程度が目安です。
取り出した遺骨は、散骨当日まで自宅で保管するか、猛暑や湿気で遺骨が傷む心配がない手元供養専門施設、もしくは納骨堂などに一時預けるかを選びます。
後者の場合は、1ヶ月で数千円程度が費用相場です。
④粉骨処理
粉骨は、遺骨を1mm〜2mm以下のパウダー状にする作業です。
粉骨により人骨と判別できない粒度にすることで、衛生面や景観などへの影響を最小限にするのが目的で、各種散骨のガイドラインによっても推奨されています。
粉骨を専門業者へ依頼すると、乾燥・粉骨・滅菌をセットで1万円〜3万円が相場です。
みらい散骨では、粉骨のみのサービスとして15,000円(税込)で承っています。
詳しくは以下のサービスページをご覧ください。
粉骨する際には粉じんや臭いが発生します。
近隣トラブルや衛生面のリスクを考えて、粉骨はご自身でやるのではなく、専門業者に依頼するのが安心・安全です。
海洋散骨における粉骨は自分でもできる?守らなければならないルールや注意点について詳しく解説
⑤散骨業者の選定と手続き
次に、散骨業者の選定と契約手続きを行います。
散骨には、大きく「海洋散骨」と「山林散骨」がありますので、それぞれの専門業者に依頼します。
散骨業者を選定する際は、次のポイントを確認して適切な業者を選ぶようにしましょう。
- 散骨プランの内容や費用
- 法的遵守状況(条例やガイドラインに沿っているか)
- 実績や口コミ評価
また、散骨する場合は事前に粉骨処理が必要となるので、一緒に散骨業者に依頼した方が良いでしょう。
散骨業者が決まったら契約手続きを行い、遺骨の受け渡しや粉骨処理、散骨などの日程などを調整し決定します。
なお、海洋散骨は「納骨」とは見なされないため、役所に提出する改葬許可申請書の「新たな納骨先」欄に記載ができません。
このため、役所では改葬許可申請を受理しない運用がなされている自治体もあります。
⑥散骨の実施
粉骨が済んだら、いよいよ散骨です。
散骨当日は、散骨業者が指定する場所に集合して、散骨場所に向かいます。
海洋散骨を選ぶ場合は、業界の自主基準にのっとり、船舶の航路や漁場、レジャー海域などを避け、陸地から一定距離(1海里〜3海里以上沖合)で実施します。
チャーター船で家族だけで散骨を行うプランや、立ち合い不要で業者が代わりに散骨を実施してくれる代行散骨など、業者によってさまざまなプランが提供されているので、要望に応じて選びましょう。
みらい散骨では、海洋散骨の以下のようなプランを提供しております。
要望があれば献花や献酒、セレモニーなどを行うこともできるので、事前に散骨業者に相談しておきましょう。
山林・樹林散骨の場合は、私有地の所有者から文書で許可を取り、自治体の条例で禁止区域に指定されていないかを必ず確認しましょう。
まれに、地権者の意向や条例の解釈によって改葬許可を求められることもあります。
したがって、事前に自治体や地権者に確認を取っておくことが大切です。
土に埋めると「埋葬」とみなされ墓地埋葬法の対象になり得るため、表面の土に軽く撒くか根元に撒く「撒骨(さんこつ)」が基本です。
当日の注意点としては、明らかに散骨だとわかるような服装(たとえば喪服など)は避けましょう。
これは、現状では散骨に対して批判的な意見を持つ方もいることから、集合場所や散骨場所で、これらの方々とトラブルになることを避けるためです。
また、散骨は天候によっては延期となる可能性もあるので、予備日の設定をしておくと安心です。
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⑥手元供養
散骨を終えた後も「故人をより身近に感じたい」という場合には、手元供養がおすすめです。
準備は散骨する前から始めます。
まず、粉骨業者に「散骨分とは別に○グラム残してほしい」と希望量を伝え、密封されたパウチや専用カプセルに分骨してもらいます。
残す量は五円玉硬貨ほど(5グラム〜10グラム)が一般的ですが、戒名入りのミニ骨壺を飾る場合はもう少し多めに確保しておきましょう。
粉骨後の遺骨は湿気を嫌うため、受け取ったら乾燥剤とともにチャック袋へ入れ、散骨が済むまでは直射日光を避けて保管します。
散骨後に、遺骨を納める容器やアクセサリーを選んで家の仏壇などに供えましょう。
アクセサリーに封入した遺骨は温度変化や汗で劣化しやすく、カビや変色を防ぐためには定期的な乾拭きやシリカゲルの交換が必要です。
相続時に所有権を巡るトラブルが発生することもあるため、生前に「分骨証明書」を発行しておくか、遺族間で保管者を明示しておくとより安心です。
墓じまいと散骨をセットで行うメリット
「墓じまいと散骨」をセットで行うことによる主なメリットは、次の2点です。
- 費用負担が軽減される
- お墓の承継者がいなくても安心できる
費用負担が軽減される
新たにお墓を建てるためには、数十万円から数百万円の費用がかかりますし、その後も管理費や清掃、法要の費用などが継続的に発生します。
これに対して「墓じまいと散骨」をすると、お墓がなくなるため初期費用や管理費用などの費用負担を大幅に削減することができます。
お墓の承継者がいなくても安心できる
「墓じまいと散骨」は、お墓という形が残らないため、次世代に負担をかけることがなく、お墓の承継者を必要としません。
子どもがいない夫婦などのように承継者がいなくても、無縁墓になる不安から解放されるので大きな安心材料となります。
墓じまいと散骨をセットで行うデメリット
「墓じまいと散骨」をセットで行う主なデメリットは次のとおりです。
- 親族とのトラブルになる可能性がある
- お寺とのトラブルになる可能性がある
親族とのトラブルになる可能性がある
お墓は故人やその家族の問題であると同時に、親族やその一族の問題でもあります。
特に高齢の親族の中には、遺骨は代々の墓に納めるべきという価値観が根強く残っていることが多いため、散骨に対して否定的な考えを持った方がいる場合もあります。
たとえば、「海に撒くなんてかわいそう」という感情的な反発を招く可能性もあります。
このようなトラブルを防ぐためには、事前に親族や関係者と丁寧に話し合い、なぜこの方法を選ぶのか、どのような配慮をするのかなどを説明して納得してもらうことが大切です。
お寺とのトラブルになる可能性がある
墓じまいのときに、お寺とトラブルになることもあります。
特に「離檀料」については明確な基準がないため、高額な請求をされることがあります。
また、檀家が減ることを嫌がって墓じまいに抵抗して、遺骨の引き渡しや埋葬証明書の発行を拒否するケースに発展することもあります。
さらに、管理者によっては海洋散骨の制度を正確に把握していないことがあり、「改葬許可証がないと遺骨を渡せない」と言われるケースも存在します。
そのような場合は、散骨業者が発行する遺骨の受入証明書で代替できることもあるため、事前に相談しておきましょう。
トラブルを避けるためには、事前に寺院に相談し、離檀料の相場や支払い方法について理解しておくことが必要です。
もし、トラブルを自力で解決することが難しい場合は、自治体の消費生活センターや消費者ホットラインに相談することができます
墓じまいの時、特に海洋散骨はプロに依頼するとスムーズ
墓じまいの後に海洋散骨する場合は、専門業者に依頼するとスムーズに進めることができます。
専門業者は、遺骨の取り出しや乾燥処理、粉骨処理、散骨日時や場所の選定、船の手配から行政への手続きなどまで行ってくれます。
海洋散骨は、法規制やマナーなどに関する専門知識が必要ですので、これらに精通したプロに任せると安心できます。
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新しい供養として「墓じまいと散骨」がおすすめ!
この記事では、「墓じまいと散骨」が注目されている背景や具体的な手続き、メリットとデメリット、費用相場などについて解説しました。
「墓じまいと散骨」は、現代のライフスタイルや価値観に合った供養方法ということができるでしょう。
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