海洋散骨における粉骨は自分でもできる?守らなければならないルールや注意点について詳しく解説
最近では、昔ながらのお墓に納める埋葬に代わる新しい供養として、「海洋散骨」が注目されています。
「自然に還る」という考え方や、お墓の管理にかかる手間や費用を省けることから、海洋散骨を選ぶ方が増えています。
そして、この海洋散骨をする前に必ず行わなければならない作業が「粉骨(ふんこつ)」です。
この記事では、粉骨とは何か、守るべきルールや注意点などについて、詳しく解説します。
粉骨の必要性と守るべきルールや注意点
粉骨とは、亡くなった方の遺骨を細かく砕いて、パウダー状にする作業のことを指します。
日本の法律では、粉骨そのものに関する明確な決まりはありません。
しかし、遺骨をそのまま撒いた場合には遺棄とみなされ、刑法にある「死体遺棄罪」に問われることがあります。
ただし、法務省は1991年に、「葬送のための祭祀(さいし)として、節度を持って行われる限り、散骨は違法ではない」とする見解を示しました。
この「節度を持った散骨」を実現するために、遺骨を見た目で遺骨とわからないくらいまで細かく砕く、粉骨を行うことが必要なのです。
つまり、海洋散骨を行うには、必ず事前に遺骨を細かく粉骨してパウダー状にする必要があります。
正しく粉骨を行うために、粉骨に関して守らなければならないこととして、次の3つがあります。
- 法律によって定められていること
- 自治体によって定められていること
- 民間団体によって定められていること
以下からは順番に、それぞれの観点ごとの具体的なルールや注意事項について見ていきましょう。
法律によって定められていること
現在の日本では、散骨や粉骨について直接定めた法律は存在しません。
しかし、遺骨は「死体などに準ずるもの」として扱われるため、遺骨を取り扱う行為には「墓地、埋葬等に関する法律」や、刑法のルールが関わってきます。
もし遺骨の取り扱いを間違えたり、社会的常識・節度を欠いた散骨や粉骨を行った場合、こうした法律に違反する可能性があり、罪に問われることもあります。
この「節度を持った対応」という考え方は、これまでも見てきた、1991年に法務省が発表した見解「葬送のための祭祀として、節度を持って行われる限り、遺棄罪には当たらない」に基づいています。
また、厚生労働省が示している「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」でも、「焼骨は、形がわからないように粉状にすることが好ましい」と推奨されています。
そのため、粉骨を行う際に注意すべき点は、以下の通りです。
- 遺骨とわからないほど細かくする
- 公共の場で人目に触れないように配慮する
こうしたポイントを守ることで、社会的な節度を保ち、誤解やトラブルを防ぐことができます。
自治体によって定められていること
粉骨という作業に関しては、一部の自治体で、場所や方法について衛生や環境の観点から注意喚起や指導が行われています。
特に、自宅やマンションなどの集合住宅で粉骨を行う場合は、周囲の方や環境への配慮が大切になります。
具体的には、粉骨に関する方針を持っている自治体として、次の地域があります。
- 東京都(23区)
- 神奈川県横浜市
- 京都府京都市
- 長野県軽井沢町
以下からは、各自治体について、それぞれどのような対応がされているか見ていきましょう。
東京都(23区)
東京都には、粉骨そのものを禁止する条例はありません。
しかし、集合住宅などで粉骨を行う場合には、衛生や環境への影響を心配する声があり、区役所が個別に指導を行うことがあります。
たとえば、過去には、近隣住民とトラブルになったケースもありました。
その際には、「専用の業者や施設を利用することが望ましい」と案内されたことがあります。
神奈川県横浜市
横浜市でも、粉骨を禁止する条例はありません。
しかし「衛生上の理由から、自宅での粉骨はおすすめできない」という立場を取っています。
特に、賃貸住宅やマンションなど集合住宅で行うと、近隣トラブルにつながる可能性が高いため、注意が必要とされています。
市役所に相談すると、「専門の業者に依頼する方が安心です」とアドバイスされることが多いでしょう。
京都府京都市
京都市では、市民から「自宅で粉骨してもいいか」という問い合わせがあった際、「禁止する法律はないが、衛生的な処理と周囲への配慮が必須」と答えています。
特に、粉塵や臭いが発生しないようにすること、使う器具の清潔さを守ることが必要とのこと。
そのため、軽い気持ちで自分だけで行うのではなく、慎重な対応が必要だと呼びかけています。
長野県軽井沢町
軽井沢町は自然環境を大切にしている地域であるため、粉骨による自然への影響にも敏感です。
町内の自宅で粉骨すること自体を禁止しているわけではありませんが、 「近隣住民や自然環境に十分配慮して、必ず密閉された場所で行うこと」 を求めているとのこと。
周囲への影響を考えた適切な作業が必要とされている地域です。
粉骨は自治体への確認がおすすめ
粉骨は法律で厳しく規制されているわけではないものの、自治体ごとに実務上の注意点や推奨方針が存在しています。
特に都市部や人口の多い地域では、 「自宅での粉骨を避け、専門施設や業者に依頼することが望ましい」 という考え方が広まっています。
そのため、粉骨を自分で行いたい場合には、必ず事前に自分が住んでいる地域の市役所や保健所に相談して確認することがおすすめです。
また、粉骨の作業では、粉塵を防ぐ工夫や器具の清掃、周囲への影響を最小限にする配慮が求められるため、慎重に行わなければなりません。
民間団体によって定められていること
海洋散骨や粉骨に関連する業界団体としては、 「一般社団法人日本海洋散骨協会」や 「一般社団法人自然葬普及協会」などがあります。
たとえば、日本海洋散骨協会では、「日本海洋散骨協会ガイドライン」として、次のようなルールを示しています。
- 遺骨は2ミリ以下のパウダー状にすること
- 衛生管理がされた場所で粉骨を行うこと
- 海岸から一定距離(通常は3海里以上)離れた場所で散骨を行うこと
こうしたルールは、法律や条例ではありません。
しかし、業界全体の信頼や、社会からの理解を得るために、しっかりと守るべき大切な基準となっています。
個人で粉骨を行う場合でも、こうしたルールにできるだけ沿って作業することが望ましいでしょう。
粉骨を行う際に意識すべき具体的なポイントは、以下の通りです。
- 粉骨は2ミリ以下に細かくする
- 作業する場所は清潔に保つ
- 散骨は十分に沖に出た海で行う
こうした点を意識することが、トラブル防止や周囲への配慮につながります。
また、粉骨作業はデリケートな問題も含むため、できるだけ信頼できる専門業者に依頼することも一つの選択肢です。
粉骨はどこに依頼すればいいの?
粉骨を行う方法は、大きく分けると次の2つです。
- 粉骨を自分で行う
- 粉骨を専門業者に依頼する
こうした方法には、それぞれ異なる特徴があります。
自分自身や家族、親族、または住んでいる地域の事情や価値観に合わせて、最適な方法を選ぶことが大切です。
以下からは、それぞれの方法について、具体的に見ていきましょう。
粉骨を自分で行う
粉骨を自分で行うことについては、法律ではっきりと禁止されているわけではありません。
ここで「はっきりと禁止されているわけではない」とあいまいに表現する理由は、粉骨に関して明確な法律が存在しておらず、状況によって判断が分かれるケースがあるからです。
具体的には、刑法190条(死体損壊等罪)の解釈によっては違法となる可能性があるのです。
たとえば、自分で粉骨を行う際に、遺骨を乱暴に扱ったり、近隣に粉が飛んでしまうなど適切でない取り扱いがあった場合、 「死体などの尊厳を損なう行為」と見なされ、罪に問われるおそれがあります。
また、北海道長沼町や埼玉県秩父市など一部の自治体では、散骨やそれに付随する行為を制限する独自の条例や指導要綱を設けています。
こうしたガイドラインに違反すると、行政指導や罰則の対象となる場合もあるのです。
しかし、こうした法律のグレーゾーンや地方のルールは存在するものの、自宅や自分の土地で、丁寧に適切な方法で遺骨を扱い、粉末状に加工する場合には、法的な問題になることはほとんどないと考えてよいでしょう。
自分で粉骨を行う場合の基本的な手順は、以下の通りです。
- 乾燥機を使用したり天日干しを行って遺骨をしっかり乾燥させる
- 乳鉢やグラインダー(電動粉砕機)、専用の粉骨機を使って遺骨を粉砕する
- 歯の治療で使われた金属や、体に埋め込まれた人工物、有害な物質などの異物を取り除く
- ふるいなど細かい網を使って、遺骨を2mm以下の大きさにする
こうした作業を進めることで、粉骨を自分で行うことは可能です。
ただし、実際には以下のような問題が起きることもあります。
- 衛生管理が難しく、周囲に粉塵が広がるリスクがある
- 作業中に精神的な負担や抵抗感を覚え、途中で手が止まってしまうことがある
- 粉骨作業に適した設備や環境を整えるのが難しい
このため、技術的には可能でも、精神的・衛生的な負担を考えると、自分で粉骨を行うことはあまり積極的におすすめできないというのが現実です。
粉骨を専門業者に依頼する
自分で粉骨を行うと、作業の手間や精神的な負担が大きくなりやすいため、専門業者へ依頼する方法を選ぶ方も多くいます。
専門業者に依頼すると、遺骨の引き取りから乾燥、粉砕、梱包までをすべてプロの手で進めてもらえるため、安心して任せることができます。
また、業者によっては、遺骨の一部を手元供養用に残すサービスを提供していたり、粉骨後のパウダーを専用の容器や水に溶ける袋に入れて丁寧に返送してくれる場合もあります。
このように、専門業者に依頼すれば、作業の負担を大幅に減らすことができるだけでなく、仕上がりもきれいで安心できる仕組みが整っています。
粉骨を専門業者に依頼するメリット
自分で粉骨を行うことも可能ではありますが、専門業者に依頼することで得られるメリットは次のように数多くあります。
- 遺族の負担を減らすことができる
- きれいに処理することができる
- 有害物質を取り除くことができる
以下からは、それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
遺族の負担を減らすことができる
粉骨という作業は、遺族にとって、日曜大工のようなDIY作業などとは違い、精神的に大きな負担となることがあります。
特に、故人と深い絆で結ばれていた場合には、「遺骨を砕く」という行為自体に強い抵抗感を覚える方も少なくありません。
専門業者に依頼することで、このような心理的な負担やストレスを大幅に軽減することができます。
また、自分で行う場合に必要な設備や道具を準備する手間も省け、全体の流れをスムーズに進めることができるため、遺族にとっても助けとなります。
きれいに処理することができる
専門業者は、専用の設備と道具を使用して粉骨作業を行うため、仕上がりが均一で、きれいになります。
自分で粉骨する場合には、どうしても粉砕の具合にムラが出たり、細かさをそろえるのが難しくなりがちですが、専門業者に任せればその心配はありません。
また、粉骨後のパウダーを専用の容器や水に溶ける袋に丁寧に収納してもらえるため、散骨や手元供養を行う際にも安心して使うことができます。
有害物質を取り除くことができる
遺骨の中には、歯の治療で使われた金属、インプラント、関節に使われていた金属部品など、さまざまな異物が混じっていることがあります。
また、火葬時に発生する六価クロム(発がん性のある有害物質)が遺骨に含まれる場合もあります。
こうした異物や有害物質は、粉骨した遺骨を海に撒いたり、自宅で保管したりする上で危険であるため、必ず除去する必要があります。
専門業者に依頼すれば、こうした不要な異物や有害物質を適切に取り除いてくれるため、衛生的にも、環境への配慮の面でも安心できるはずです。
自分で行う場合、こうした除去作業は難しく、正確に行うのは困難なため、専門業者への依頼がおすすめです。
粉骨の費用相場
粉骨を依頼する場合、費用は業者やサービス内容によって異なります。
一般的な費用相場は、次の2つのケースに分けることができます。
- 粉骨サービスの費用相場
- 粉骨を含む散骨サービスを依頼する場合
それぞれについて、以下から詳しく説明します。
粉骨サービスの費用相場
粉骨だけを専門業者に依頼する場合、一般的な費用相場はおよそ1〜3万円程度です。
この料金には、主に以下のサービスが含まれることが多いです。
- 遺骨の引き取りと返送
- 粉砕作業
- 異物や有害物質の除去作業
- 専用袋や専用容器への収納
また、一旦お墓に埋葬されていた遺骨を粉骨する場合には、事前に遺骨を十分に乾燥させる必要があります。
この乾燥作業には追加料金がかかることが多く、その相場は1〜2万円程度です。
依頼する前に、乾燥作業の有無と費用についても必ず確認しておくと安心です。
粉骨を含む散骨サービスの費用相場
粉骨作業を含めたうえで、海洋散骨まで業者に依頼する場合、費用は選択する散骨方法によって異なります。
それぞれの海洋散骨の方法と費用相場は、以下の表の通りです。
海洋散骨の方法 | 費用相場 |
チャーター散骨(貸切散骨) | 約15~25万円 |
合同散骨(複数の遺族が同じ船に乗る散骨) | 約10~20万円 |
代行散骨(代理散骨) | 約2~10万円 |
まず、チャーター散骨とは、家族や親族だけで船を一隻貸し切って散骨を行う方法です。
希望に応じてセレモニーを行うことも可能で、乗船人数や海域によって費用が変動しますが、船の定員以内であれば何人乗っても追加料金は発生しないことが一般的です。
合同散骨は、1隻の船に複数の遺族が乗り、順番に散骨を行う方法で、チャーターに比べると費用が抑えられます。
代行散骨は、遺族が現地に行かず、業者が代理で散骨を行う方法です。
費用をできるだけ抑えたい場合や、体力的に現地に行くのが難しい場合に選ばれることが多いです。
それぞれの方法には特色があるため、自分たちの希望や予算に合わせて最適なプランを選びましょう。
粉骨は自分でもできるが専門業者に任せた方が安心できる!
今回は、海洋散骨を行う前に必要な粉骨について、自分で行う場合と専門業者に依頼する場合の違いや、それぞれの注意点について詳しく紹介しました。
海洋散骨を行ううえで、粉骨はどうしても避けて通れない大切な作業です。
自分で行うことも技術的には可能ですが、法律や自治体の条例、業界団体のガイドライン、さらにはマナーや衛生管理、安全管理といった多くの点に細心の注意を払わなければなりません。
また、精神的な負担や作業の難しさを考えると、信頼できる専門業者に粉骨を依頼した方が、安心して確実に進めることができるでしょう。
もちろん、専門業者に依頼する場合は一定の費用がかかります。
しかし、費用に見合った丁寧な対応や、高い安全性、精神的な負担の軽減といったメリットが得られるため、十分に価値がある選択といえます。
これから海洋散骨を考えている方は、まず粉骨について正しい知識を持ち、自分たちにとって最適な方法を冷静に選ぶことが大切です。
みらい散骨では、粉骨サービスを15,000円(税込)からご利用いただけます。
お預かりしたご遺骨は、専用のトレーに移し、異物が混ざっていないか丁寧に確認します。
その後、釘や金属片、燃え残った硬貨などが見つかった場合は、一つひとつ手作業で慎重に取り除きますので、安心してお任せください。
また、海洋散骨とセットでご利用いただくことも可能です。
ご希望の方はまずはぜひご相談ください。